Idea のwebページのLyric では、六つのスタンザに分けられている「1000 Umbrellas」。大きくは二つの連になっています。
8行ー7行ー9行の三つのスタンザが、大きな一つの連で、それが繰り返されているのですけれど、第一の大連の一つ目のスタンザは、「Misery oh oh misery」が繰り返されて、9行になっています。それと対峙するかのように、第二の大連の三つ目のスタンザは、「One thousand umbrellas opened / Two thousand umbrellas opened」の変化が加えられる繰り返しの二行が加えられて、11行になっています。
9行ー7行ー9行 /
8行ー7行ー11行
と言う構成です。
簡単な楽句の繰り返しのようで、少しばかりの加減を加えることで、表面的には静的でありながら、動的なものを含んでいる、という複雑さを持っている歌です。その動きと言うのは、何か崩落するような揺らぎなのですけれど。
歌詞は、
「One thousand umbrellasUpturned couldn't catch all the rainThat drained out of my headWhen you said we wereOver and over I cried'Til I floated downstreamTo a town they callMisery oh oh miseryMisery oh oh miseryAnd one million teacupsI bet couldn't hold all the wetThat fell out of my eyesWhen you fell out with meNow I'm crawling the wallpaperThat's looking more like a roadmapTo misery oh oh misery 」
の二つのスタンザが、バース。
三つ目のスタンザは、
「How can you smile and forecastWeather's getting betterAnd you'll soon forget herIf you let the sunshine come throughHow can you smile and forecastWeather's getting betterIf you never let a girl rain all over you」
のブリッジの部分と、
「And just when I thought that my vista was golden in hueOne thousand umbrellas opened to spoil the view」
のコーラスの部分がくっついたものになっています。
この歌の歌詞での、核になっているのは、大連の最後の語「view」と韻を踏むその前の行の語にあるのではないかと思います。
第一大連では、「hue」が選ばれています。第二大連では、「blue」。その嗚咽に近い語感が、この歌の核ではないでしょうか。「vista-hue-view」「skies-blue-view」、どれも視覚に関する語なのですが、線分ー構成の語に挟まれて、色彩の語があるのは、発色がある限定の中に閉じ込められているようで、物悲しさを感じさせるようでもあります。
他に耳に残る語感に、「over and over」もあるのですが、これは、ムールディングが、「Grass」の中でも、印象的に使っていますけれど。パートリッジのこの歌では、意味が重層化されて面白いです。
歌詞の描き出している情景は、朝食の食卓。たぶん卓上は乱雑に散らかっているのではないでしょうか。放り出されて中のシリアルがこぼれ出ている紙箱。点けっぱなしで天気予報を映している小さなテレビ。何かが飛び散ったのだろう、染みの出来た壁紙。
「壁紙の上を這う」と言う表現は、パートリッジは、『English Settlement』の「No Thugs in our House」でも使っていました。「Sunny Jim」 は、シリアル食品の宣伝用のキャラクターで、日本でも有名なポパイと同様なものです。「High o'er the fence leaps Sunny Jim Force is the food that raises him」と言う宣伝文句が有名とのことです。「パッケージ裏の文句」と言うのは、『The Big Express』の「I bought myself a LiarBird」でも使っていましたけれど。
拙訳です。
1000 の傘
一千本の傘を私は
ひっくり返したのだけれど、それでは、私の
頭から降り注ぐ雨を受けられはしなかったのです、
「水位が上がってます、私たちは破滅です」なんて、天気予報のお姉さんが言うものだから、
私は、何度も繰り返して、叫んでいたのです、
下る流れに浮かんで、ずっと叫んでいたのです、
そして、ミズリーと呼ばれる町へ着きました。
一百万の湯呑みを私が
持っていたとしても、それでは、私の
まなこから降り落ちる雨を受けるのは、きっと無理だったと思うのです、
天気予報のお姉さんは、私の視界から抜け落ちてしまいました、それなものだから、
私は、壁紙の上を睨め回しているのです、
壁紙は、まるで、道路地図のようですよ、
ミズリーと呼ばれる町へ至る道路の。
天気予報のお姉さん、どういうわけだか、にっこり笑って、
「お天気は回復傾向です」なんて言う、
「雨のことはすぐに忘れてしまうでしょう、
日の光が降り注げばですね」なんて、
天気予報のお姉さん、どういうわけだか、にっこり笑って、
「お天気は回復傾向です」なんて言う、
「あなたの軒にフレフレお嬢を吊り下げなければですね」なんて、
私の道行きが黄金色に彩られたと思った、その時、
一千の傘が開いて、景色を台無しにしてしまったのです。
一百万の塩湖、
小学校のアトラス地図を、私は思い出しますけれど、
その塩湖が雨水でいっぱいになってしまうかもしれません、
そうしたら、サニー・ジムだって、飛び越えられないですよ、
嬉しいなんて、そんな、
鍵を回してしまったのですよ、
ミズリーと呼ばれる町へと開く扉の。
モップとバケツ、それでもって、
雨を忘れてしまおう、
私は拭き続けました、
さっきまで泣いていたところをです、すると、
道化の一団が背後に忍び寄るでしょうね、
新しく王冠を戴いた君主を叩き落とそうと、
ミズリーの領主を。
天気予報のお姉さん、どういうわけだか、にっこり笑って、
「お天気は回復傾向です」なんて言う、
「雨のことはすぐに忘れてしまうでしょう、
日の光が降り注げばですね」なんて、
天気予報のお姉さん、どういうわけだか、にっこり笑って、
「お天気は回復傾向です」なんて言う、
「あなたの軒にフレフレお嬢を吊り下げなければですね」なんて、
私の仰ぐ空は、六月七月の快晴の青と思った、その時、
一千の傘が
二千の傘が、
一万の傘が開いて、景色を台無しにしてしまったのです。
元は失恋の歌だと思います。使われている代名詞の you を、天気予報士の女性にして、やや幻想的に読み替えました。
「If you never let a girl rain all over you」の行は、あなたに少女が雨を振りかけることを決してさせなければ、とは読まずに、可笑しげな情景に読みました。雨と少女が、伝説や言い伝えで関連があるのかどうかは知りません。「フレフレお嬢」は、「てるてる坊主」の連想で、パートリッジの原詩から読み取ったわけではありません。それから、アンリ・カルティエ=ブレッソン (Henri Cartier-Bresson)の写真を思い浮かべはしました。
Fondation Henri Cartier-Bresson